MBD(Minimal Brain Dysfunction, 微細脳機能障害)と発達障害(ADHD, LD)
MBD(Minimal Brain Dysfunction, 微細脳機能障害)という脳神経学的な障害概念は、東大医学部の小児科医・鈴木昌樹氏の啓蒙的な発達障害研究によって日本の医学界に浸透した概念である。最近は、発達障害分野(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群・ADHD・LDなど)の医学的・臨床心理学的・教育学的な調査研究の進展により、MBD(minimal brain dysfunction)の神経学的概念が臨床で用いられることは少なくなっているが、 1970年代の日本における鈴木昌樹のMBD研究と啓蒙は画期的で先進的なものであった。
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脳神経の微細な損傷であるMBDと発達上の問題や行動上の不適応を結びつけて研究した鈴木昌樹の研究成果の一端は、『小児言語障害の診療』や『微細脳障害‐学習障害児の医学‐』の書籍で伺うことができるが現在では著作の殆どが絶版になってしまっている。MBDを起点とする発達障害の理解は現在では古典的な業績になっているが、鈴木昌樹が小児神経医学や障害児教育の分野に果たした功績は大きく、現代におけるADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder, 注意欠陥多動性障害)やLD(Learning Dysability, 学習障害)を科学的に理解するための先鞭となるものであった。
ADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)という発達障害の分類整理や診断基準が確立する以前には、『不注意・多動・衝動性・学習上の問題(読字・書字・計算・記憶の障害)』の問題は、MBD(微細脳機能障害)という脳神経学的な障害概念で説明されていたのである。1970年代に普及したMBD(微細脳機能障害)の損傷は、出生時外傷や中枢神経系の成熟障害(成長障害)によって起きると考えられていた。
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脳神経医学におけるMBDは、心的外傷や愛情不足で学習障害や言語障害、不適応な行動(不注意や衝動的な逸脱行動)が発生するという『精神分析的な心因論』を否定する因果的な推論によって生まれた障害概念である。MBDは合理的な推論ではあるが、CTスキャン(Computerized Tomography scan:コンピューター断層撮影法)やMRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像診断法)、PET(Positron Emission Tomography:陽電子断層撮影法)、脳波計などで観察することが出来ないという意味で実証的にその存在が確認された障害ではない点には注意が必要だろう。
MBD発見以前には、細かい運動やスムーズな動作ができず、運動能力や知能の発達、衝動の抑制に問題がある精神薄弱(知的障害の旧称)児を含む子供達は、脳損傷を伴うシュトラウス症候群という疾病概念でまとめて説明されていた。シュトラウス症候群に分類されていた臨床症候群は、MBD(微細脳機能障害)で説明されるようになり、現在ではADHDやLD、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の疾病概念に分類され理解されるようになってきている。
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1960年代から1970年代までは、事故や病気などによる明確な脳損傷(中枢神経系の損傷)を指摘できる患者群を『脳損傷』と診断し、確実な脳損傷の既往歴はないが、知能が正常範囲内なのに学習障害や逸脱行動(不注意と衝動的な暴力行動、ルールの無視、多動)が見られる小児の患者群を『微細脳障害(微細脳機能障害)』と診断していた。
現在のADHDの医学的治療には、塩酸アンフェタミンと似た化学構造を持つリタリンという中枢神経刺激薬が使用され一定の治療効果を上げている。依存性と耐性の問題からADHDの小児にリタリンを積極的に処方すべきか否かは精神科・小児科の医師でも意見が分かれるが、現在までの治療経過では依存性以外の致命的な副作用の報告は殆ど見られないようである。しかし、中枢神経系を覚醒・興奮させる塩酸メチルフェニデート(商品名・リタリン)には、少数例ながらもアメリカで死亡事例の報告がある。医師から指定された用量用法を厳密に守って服用しなければならないので、薬剤の管理は小児の親が責任を持って行う必要がある。
リタリンは乱用すると多幸感や爽快感、解放感を感じて依存性が生じることがあるが、過剰投与(大量服用)すると幻覚妄想の副作用が起きるので規定容量を守る必要がある。リタリンは一般的にADHDの特効薬的な薬剤として認知されているが、一部の遷延性(慢性)や難治性のうつ病、ナルコレプシーにも処方されることがある。小児精神科の医師はADHDの問題行動を呈する小児へのリタリン処方に際しては、リタリン服用のメリット(症状改善・環境適応の社会的利益)とデメリット(副作用・習慣性依存性)を慎重に比較考量して処方する必要があるだろう。
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